歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに繰り返してしまうことが多く、歯やあご、さらには全身にまで負担をかけることがあります。たとえば、歯のすり減りや、あごの筋肉が疲れる、肩こりや頭痛などの不調につながることもあります。こうした症状に対して、一部の歯医者で取り入れられている治療の一つが「ボトックス治療」です。美容目的として知られるボトックスですが、歯科分野では筋肉の過剰な緊張を抑える手段として用いられることがあります。今回は、歯医者で行うボトックス治療の仕組みや目的、歯ぎしり・食いしばりへの効果について解説します。
1. 歯医者で行うボトックス治療の仕組みと目的
ボトックスは、ボツリヌス菌から作られる成分を有効利用した注射で、筋肉の働きを一時的にゆるめる作用があります。美容領域ではシワを目立ちにくくする目的で使用されますが、歯医者では主に「咬筋(こうきん)」と呼ばれるあごを動かす筋肉に注射されます。
①仕組み
ボトックスが筋肉に作用すると、神経から筋肉への「動け」という信号が伝わりにくくなります。その結果、筋肉が強く収縮するのを防ぎ、過剰な働きをやわらげると考えられています。
②目的
歯ぎしりや食いしばりによって生じる歯の摩耗やヒビ割れを予防を目的に行われることがあります。また、これらの習慣によって顎関節に負担がかかると、痛みやだるさなどの症状が現れることがありますが、ボトックス注射により咬筋の緊張がやわらぐことで、そのような症状の軽減が期待されます。
③特徴
効果は数か月持続しますが永久的ではなく、時間が経つと再び筋肉の動きが戻ります。そのため、必要に応じて繰り返しの施術が検討される場合があります。
ボトックス治療は、薬を飲むのではなく注射で直接筋肉に働きかけるため、特に夜間の歯ぎしりや意識できない習慣に悩んでいる方に用いられる傾向があります。
2. 歯ぎしり・食いしばりに対するボトックスの効果
歯ぎしりや食いしばりは、睡眠中や集中しているときに無意識で行われることが多く、本人が自覚しにくい点が特徴です。ボトックス治療を行うことで、このような症状をやわらげる効果が期待できます。
①歯の保護
強い力でかみしめる習慣が抑えられることで、歯の摩耗や欠けを予防できる可能性があります。
②顎関節への負担軽減
筋肉の力がやわらぐと、顎関節にかかる圧力も減少し、顎の痛みや動かしにくさが和らぐ場合があります。
③全身への影響の緩和
肩こりや頭痛など、食いしばりが原因で起こるとされる不快な症状が改善するケースもあります。
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④見た目の変化
咬筋が目立たなくなることで、フェイスラインがすっきりと感じられる方もいます。ただし、美容目的ではなく、あくまで治療の副次的な変化と捉える必要があります。
⑤他の治療との併用
マウスピースや生活習慣の改善と組み合わせることで、歯ぎしり・食いしばりを抑えられることもあります。
ボトックス治療は歯ぎしり・食いしばりを完全に取り除くものではありませんが、症状の程度を和らげる手段として役立つことがあります。
3. ボトックス治療を受ける前に知っておきたい注意点
ボトックス治療は比較的短時間で受けられる方法ですが、事前に知っておくべき注意点があります。特に歯医者で行う場合は、口周りの筋肉に直接作用するため、慎重な判断が必要です。。
①効果の持続期間と再施術
ボトックス治療の効果は永続的ではなく、おおよそ3〜6か月で薄れていくといわれています。効果を保ちたい場合は、症状や生活への影響を見ながら継続の有無を検討します。
②副作用やリスク
注射後は一時的にあごのだるさや噛む力の低下を感じることがあります。まれに内出血や違和感もあり、個人差があるため、事前に歯科医師の説明を受け、分からないことは相談しておくことが大切です。
③妊娠・授乳中の施術制限
ボトックスは胎児や乳児への影響が十分に解明されていないため、この時期は施術を控えることが推奨されます。
④即効性への過度な期待
注射直後に強い効果が出るわけではなく、2〜3日後から徐々に現れ、1〜2週間で安定する傾向があります。
⑤他の治療との併用
ボトックス治療だけで歯ぎしりや食いしばりを完全に防げるわけではありません。マウスピースや生活習慣の見直しを組み合わせることも重要です。
このように、ボトックス治療は歯ぎしりや食いしばりの対策の一つとして用いられることがありますが、全員に適しているとは限りません。効果やリスクを理解したうえで、歯科医師とよく相談して判断することが大切です。
4. 名古屋市天白区の歯医者 すすむ歯科・矯正歯科のボツリヌス治療(ボトックス治療)
名古屋市天白区にある歯医者 すすむ歯科・矯正歯科では、顎まわりの筋肉に起因する「歯ぎしり」や「食いしばり」に対し、ボツリヌス治療(ボトックス治療)による筋肉の緊張緩和を行っています。マウスピースのような装置を使わずに対処したい方や、顎の疲れ・こわばりが長引いている方に向けた自由診療のメニューです。
ボツリヌス治療(ボトックス治療)は、噛むときに使われる「咬筋(こうきん)」へ作用し、必要以上に強く働いている筋肉の活動を一時的におさえる処置です。
歯や顎への過度な負担を減らすことで、違和感の軽減や、再発予防にもつながります。
《こんな方に向いています》
✅就寝中の歯ぎしりを指摘されたことがある
✅朝起きたときに顎が重だるく感じる
✅食いしばるクセがある
✅マウスピースが合わなかった、続けられなかった
✅顎まわりの張り感が気になる
症状の程度や生活スタイルに応じて、マウスピースとの併用や、他のアプローチも組み合わせながら、無理のない治療計画をご提案しています。
《施術の概要》
①費用:イノトックス50単位(左右25単位ずつ)28,000円(税込)※自由診療
②所要時間:数分程度(カウンセリングは別途)
③効果の持続:個人差がありますが、おおよそ3〜6か月程度
④副反応:注射部位の軽度な腫れ・だるさなどを感じる場合があります
一度の注射で様子をみるケースもあれば、効果が薄れてきたタイミングで定期的に施術を受ける方もいらっしゃいます。
無理に勧めることはありませんので、まずはご相談だけでもお気軽にお越しください。
ボツリヌス治療(ボトックス治療)について不安がある方にも、時間をかけて丁寧にご説明いたします。
※「ボトックス」という名称は、アラガン社が製造販売する薬剤の商品名です。正式には、ボツリヌス菌が生成するたんぱく質を利用した「ボツリヌストキシン注射」と呼びます。
まとめ
歯医者で受けるボトックス治療は、歯ぎしりや食いしばりによって引き起こされる症状に対して、筋肉の働きを一時的に緩和するという視点からアプローチする方法です。治療効果には個人差があり、すべての人に適しているわけではありませんが、他の治療と組み合わせることで症状を軽減できる可能性があります。ボトックス治療を検討する際は、リスクや効果、継続の有無などをしっかりと理解し、信頼できる歯科医師のもとで相談することが大切です。
歯ぎしり・食いしばりにお悩みの方は名古屋市天白区の歯医者「すすむ歯科・矯正歯科」までお問い合わせください。
監修:すすむ歯科・矯正歯科
院長 近藤 崇伸
経歴
2002年 愛知県立瑞陵高等学校卒業
2009年 長崎大学歯学部 卒業
名古屋大学医学部歯科口腔外科 入局
2011年 医療法人ナディアパークデンタルクリニック 勤務
2013年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯科矯正分野 入局
2016年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 修了
長崎大学客員研究員・臨床承認医
すすむ歯科・矯正歯科勤務
名古屋、大阪、長崎の複数のクリニックにて矯正治療担当
副院長 近藤 康次
経歴
2009年 私立東海高等学校 卒業
2016年 鹿児島大学歯学部 卒業
名古屋大学医学部附属病院歯科口腔外科 入局
2018年 東海市開業医勤務
2020年 すすむ歯科・矯正歯科勤務
