1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
● 年齢・性別
77歳・男性
● 初診
2019年(入れ歯の不調が主訴)
● 今回のお悩み
歯周基本治療(SRP)や定期的なメンテナンスを行っているが、深い歯周ポケット、出血、歯の動揺が治まらない。
こちらの患者さんは、もともと2019年に「入れ歯」のご相談で来院されました。
その際、残っているご自身の歯にも歯周病が見つかったため、入れ歯の治療と並行して歯周病治療を開始しました。
長きにわたり、私たちと一緒に歯を守るためのケア(SPT)を続けてこられましたが、一部の歯において「深い歯周ポケット」「ブラッシング時の出血」「歯の揺れ」といった症状が慢性化していました。
患者さんご自身も「なんとかこの症状を改善したい」「自分の歯を諦めたくない」という強い意志をお持ちでしたが、従来の治療法だけでは改善が難しく、一進一退の状態が続いていました。
「Scaling and Root Planing」の略です。専用の器具を使って、歯の表面や歯周ポケット(歯と歯ぐきの隙間)の奥深くに付着した歯石や細菌の塊を除去し、歯の根の表面をツルツルに仕上げる、歯周病の基本となる治療法です。
2. ご来院時の状態と診断
今回、改めてブルーラジカル治療の適応を含めた精密検査を行いました。
【治療開始時の状態】
●排膿: 前歯と奥歯の歯ぐきから、指で押すと膿が出る状態。
●動揺: 歯を支える骨が溶けているためグラつきがあり、ワイヤーで隣の歯と固定して維持している状態。
●骨の状態: X線検査にて、歯を支える歯槽骨の著しい吸収(骨が溶けて減っていること)を確認。
【診断】
重度歯周炎(広汎性重度慢性歯周炎の急性発作を含む)
通常、ここまで骨吸収が進んでいる重度のケースでは、歯ぐきを切開して内部を清掃する「歯周外科治療(フラップ手術など)」が検討されます。
しかし、今回の患者さんは77歳というご年齢や、全身的な負担、そして骨吸収があまりに進んでいることから、外科手術の適応は難しい(または予後が期待できない)という判断に至りました。
これまでは「現状維持」を目指すしかありませんでしたが、患者さんの「良くなりたい」という切実な想いに応えるべく、厚生労働省の承認を受けたばかりの非外科的治療器「ブルーラジカル」をご提案しました。
「Supportive Periodontal Therapy」の略で、歯周病安定期治療のことです。歯周病治療が一通り終わった後、病気の再発を防ぎ、安定した状態を維持するために行う、プロフェッショナルによる定期的な検査とお掃除のことを指します。
3. 治療計画
今回の治療における最大のポイントは、「長年の通院による信頼関係」と「患者さんの高いセルフケア能力」がベースにあったことです。
【当院の強み:継続的な管理とスムーズな連携】
ブルーラジカル治療は、機械を当てればすぐに完治するものではなく、事前のケアが重要です。治療効果を最大化するためには、事前の「プラークコントロール(歯垢除去)」が完璧であることが大前提です。多くのケースでは、まずTBI(ブラッシング指導)から始め、歯ぐきの腫れをある程度引かせてからでないと照射治療へ進めません。
しかし、こちらの患者さんは当院のSPT(定期管理)にずっと通ってくださっており、ご自身での歯磨き(TBI)が既に非常に高いレベルで定着していました。そのため、歯の表面はきれいな状態であり、改めてブラッシング指導を行う期間を設ける必要がありませんでした。SPTの流れの中でスムーズに検査を行い、タイムロスなく最短でブルーラジカル治療へと移行することができました。
【治療プラン】
1.事前検査: 歯周ポケット検査、出血の有無の確認(SPT時に実施済み)。
2.ブルーラジカル照射: 患部に対し、局所麻酔下で照射を行う。
3.経過観察: 3ヶ月後の再評価まで、通常のケアを継続。
「Tooth Brushing Instruction」の略で、歯科衛生士による歯磨き指導のことです。自己流の歯磨きでは落とせない汚れを効率よく落とすための磨き方や、歯間ブラシなどの補助用具の使い方を練習します。
4. 治療時(ブルーラジカル照射)
いよいよ治療当日です。
ブルーラジカル治療は、重度の歯周病であっても「歯ぐきを切らずに」治療ができるのが最大の特徴です。
【当日の流れ】
1.局所麻酔: 痛みを全く感じないよう、治療部位に麻酔を行います。
2.照射:前歯部:約3分間 / 奥歯部:約7分間
超音波振動と過酸化水素水、そして青色レーザー光を同時に作用させ、歯周ポケット内の細菌を殺菌・除去します。
3.終了・帰宅: 縫合などの処置は不要です。
【治療中の様子】
照射直後、殺菌作用とタンパク変性により歯ぐきが一時的に白く変化しますが、これは正常な反応です。
患者さんには鏡で確認していただきましたが、出血もコントロールされており、見た目の変化についても事前にご説明していたため、落ち着いて受け入れられました。
この治療の素晴らしい点は、「すぐに歯磨きができる」という点です。
外科手術の場合、抜糸までは歯ブラシを当てられず、その間に汚れが溜まってしまうリスクがありますが、ブルーラジカルは当日からいつも通りのケアが可能です。
【痛みについて】
麻酔が切れた後も、「痛かった」というお声は今のところいただいておりません。
「たまに歯ブラシに血がつくことがある」程度で、日常生活に支障をきたすようなダウンタイムはほぼ皆無です。
77歳というご高齢の患者さんにとって、身体への負担が少ないことは何よりのメリットと言えます。
世界で初めて実用化された、歯周病治療のための新しい医療機器です。過酸化水素水に青色レーザーを照射することで発生する「ラジカル」という物質が、歯周病菌を強力に殺菌します。従来は外科手術が必要だった重度歯周病に対し、歯ぐきを切らずに治療できる方法(非外科的アプローチ)で、手術と同じような効果を目指すことが期待できます。
5. 治療後・予後
治療から現在までの経過についてご報告します。
【現在の状況】
治療直後の不快症状はなく、患者さんも普段通りの生活を送られています。
ブルーラジカル治療の効果判定(組織が修復され、骨の状態などがどう変化したか)には、組織の治癒期間として約3ヶ月の時間が必要です。
そのため、現段階では「経過観察中」となります。
3ヶ月後の精密検査にて、歯周ポケットの深さや動揺度、出血の有無、そしてレントゲンでの骨の状態を再評価する予定です。
【今後の展望】
今回の患者さんのように、骨吸収が進んで外科手術が難しい方や、高齢で侵襲の大きな治療を避けたい方でも、前向きな気持ちで治療を検討できる選択肢の一つがブルーラジカルです。
長年、真面目に通院し、ご自宅でのケアも頑張ってこられた患者さんだからこそ、この新しい技術で良い結果が出ることを私たちスタッフ一同も強く願っています。
3ヶ月後の検査結果が出ましたら、症状がどのように改善したか、改めてこのブログでご報告させていただきます。
重度の歯周病でお悩みの方、抜歯しかないと言われてしまった方も、ぜひ次回の更新をお待ちください。
当院では、患者さん一人ひとりの進行度やライフスタイル、ご希望に合わせた治療計画をご提案しています。
特に、今回のような「日々のケア(TBI)とプロの管理(SPT)の連携」こそが、高度な治療を成功させる鍵となります。
「もう歳だから」「随分進行しているから」と諦める前に、一度当院へご相談ください。これまで培ってきた管理体制を活かし、歯の健康管理に取り組んでいます。
名古屋市天白区の歯医者 すすむ歯科・矯正歯科の歯周病治療
名古屋市天白区の歯医者 すすむ歯科・矯正歯科では、歯周病治療に注力し、歯ぐきの炎症や歯のぐらつきなど、軽度から重度まで幅広い症状に対応しています。
2025年9月には重度の歯周病にも非外科的にアプローチできる医療機器「ブルーラジカル P-01」を導入しました。
「歯ぐきを切らないと治らない」「治療しているのに腫れや膿が続く」といったお悩みをお持ちの方に対応しています。(自由診療)
歯周病は40歳以上の日本人の多くにみられ、進行すると歯を失う原因にもつながる病気です。
当院では、歯周病の早期発見・進行抑制・予防を大切にし、患者さんの大切な歯を少しでも長く保てるようサポートしています。
《当院の歯周病治療の特徴》
歯周病治療の特徴① 初期から重度まで幅広く対応
歯肉炎の段階から、骨の吸収が進んだ中等度・重度の歯周病まで幅広く診療しています。
必要に応じて、外科的な処置や再生療法、ブルーラジカル P-10を用いて治療(自由診療)を行うこともあります。
歯周病治療の特徴② 丁寧なカウンセリングと検査
歯周ポケットの深さやレントゲン画像をもとに正確な診断を行い、患者さんに分かりやすく説明します。
ご自身の状態を理解いただくことが、治療を始めるうえで大切と考えています。
歯周病治療の特徴③ 歯石除去・クリーニングによる原因除去
歯周病の原因となる歯石やプラークを、専用の器具を用いて丁寧に取り除きます。
定期的なクリーニングを続けることで、歯周病の進行を抑えやすくなります。
歯周病治療の特徴④ ブルーラジカルP-10を用いた非外科的処置への対応(自由診療)
ブルーラジカル P-01は、東北大学が開発し、厚生労働省により認可された世界初の非外科的歯周病治療機器です。
「歯ぐきを切らないと治らない」「治療しているのに腫れや膿が続く」といったお悩みをお持ちの方に活用しています。
歯周病治療の特徴⑤ メンテナンスと予防管理
治療後も再発を防ぐために、継続的なメンテナンスを行います。
歯周病は一度進むと元通りに戻すのは難しい病気だからこそ、定期検診と毎日のセルフケアが重要です。
すすむ歯科・矯正歯科では、患者さん一人ひとりに合わせた歯周病治療と予防プランをご提案しています。
歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯のぐらつきなどが気になる方は、名古屋市天白区のすすむ歯科・矯正歯科までお気軽にご相談ください。
▼歯周病治療の詳細はこちら
▼ブルーラジカルの詳細はこちら
監修:すすむ歯科・矯正歯科
院長 近藤 崇伸
経歴
2002年 愛知県立瑞陵高等学校卒業
2009年 長崎大学歯学部 卒業
名古屋大学医学部歯科口腔外科 入局
2011年 医療法人ナディアパークデンタルクリニック 勤務
2013年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科歯科矯正分野 入局
2016年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 修了
長崎大学客員研究員・臨床承認医
すすむ歯科・矯正歯科勤務
名古屋、大阪、長崎の複数のクリニックにて矯正治療担当
副院長 近藤 康次
経歴
2009年 私立東海高等学校 卒業
2016年 鹿児島大学歯学部 卒業
名古屋大学医学部附属病院歯科口腔外科 入局
2018年 東海市開業医勤務
2020年 すすむ歯科・矯正歯科勤務