歯科と生活習慣病の関係
虫歯、歯周病は2つのルートで生活習慣病を発症させる
血管を介するルート
虫歯は進行すると歯の内部にまで細菌が侵入し、さらに歯根の先端から飛び出した細菌は血管に入り、全身に回ります。そして遠く離れた臓器に炎症を起こします。
心臓の中から虫歯菌が発見されることはよく知られています。(細菌性心内膜炎)
栄養状態に影響を及ぼすルート
虫歯、歯周病が進行すると食物を十分に咀嚼できなくなり栄養の偏りが生じてきます。
炭水化物(特に糖質)が増え、タンパク質・食物繊維・ビタミン・ミネラルが減少することが分かっています。
メタボリックドミノと歯科
メタボリックドミノとはメタボリック症候群をわかりやすく解説した図のことです。
生活習慣の些細な問題や口腔内の疾患がドミノ倒しのように次々と新しい疾患を連鎖的に発症し、内科的疾患、さらには外科的処置が必要とされるような重篤な疾患へと発展してゆく様を模式図として表しています。
このドミノ倒しはできる限り早期に止めることが大切であることを私たちに教えてくれています。
このドミノの最上流に歯科疾患は位置しています。ここでメタボリック症候群の予兆を見つけることが私たちの重要な役割と考えています。
生活習慣病を予防するために
生活習慣病は6つの柱(食習慣・栄養・運動・休養・飲酒・喫煙・歯の健康)の中の問題点を見つけ出し、それを改善することが予防へと繋がります。
まず、私たち歯科医療従事者が第一にできることは歯の健康を獲得・維持することです。
そうして食品の咀嚼能力を回復させたうえで、食習慣、栄養の問題点を見つけ出し、改善してゆくことだと考えています。
運動・休養・飲酒・喫煙に関しては情報提供することで、自発的改善へと繋げたいと思っています。
歯を大切にしないといけない本当の理由
皆さんは歯科に来ると歯磨き指導をされて、「虫歯、歯周病にならないようにしましょう」と言われてきたと思います。
でもそれは、虫歯になって痛い思いをしないように、歯周病で歯が抜けてしまわないようにするためだと思っていませんか?
もちろん生活の質を保つためには絶対に必要なことです。
実はさらにもっと深い理由があります。虫歯、歯周病は進行すると、その部位から虫歯菌、歯周病菌が直に血管のなかに侵入して、体中を廻ってまず血管を痛めます。
つぎに遠く離れた臓器に炎症を起こします。
もちろん虫歯、歯周病の部位では慢性炎症が起き、炎症性サイトカインを分泌して全身に炎症反応を起こします。
つまり、口の中だけに留まらず、重大な生活習慣病へとドミノが倒れ始めるのです。口腔を清潔にすることは最初のドミノを倒さないようにするという深い理由があるのです。